会長ご挨拶(2011年)

澪電会会長 吉野 勝美
(電・昭39)

今年6月総会で指名され会長を務めることとなりました。よろしくお願い致します。浅学非才の身であります私如きが百年を超える伝統をもつ澪電会会長職をお受けする資格があるものとは思ってもおりませんでしたが、あらためて要務の重要性を深く認識し全力を傾注して澪電会の皆様のため、母校のためお役に立ちたいと心に決めております。

さて、バブル崩壊以来リーマンショックなど様々な困難な事態が発生しかなり長い間厳しい状況下にあった日本は、3月11日の東北地方太平洋沖地震、巨大津波による東日本大震災、それが引き金になって発生した東京電力福島第一原子力発電所の重大事故による広域避難地域の発生などの事態が一挙に発生したため決定的な大打撃を受けました。その後の政府のリーダーシップの欠如もあって円高,企業の海外シフトの加速などで、我国は大変な状況にあることはご承知の通りであります。その過程で電力不足により、日常生活、産業活動に大きな制約がかかり、当たり前のように使ってきた電気がいかに有難い重要なものであるかと云うことが強く認識されることとなりました。ここで電気系の学問、教育、産業に関わった我々が社会に役立つべく大きな寄与をする必要があると感じております。 少し以前から日本の将来が必ずしも安泰ではないと強く感じ、少し危機感を持ち始めておりまして、いろんな機会に思っていることを発言させて頂いております。

 産業、社会が劇的な変化をすることがしばしばあり、それに順応、対応し乗り越える力、資質を常日頃から身に付けておかなければとんでもない状況になることが歴史的にもよく知られております。すなわち、産業構造が、産業の種類、社会の活力が全く変化する事態が、①科学技術の常識を超えての非連続的な変化、②資源の枯渇、環境の制約、③国際間の経済力、技術力、労働力のバランス変化、④大戦争、⑤天変地異、など様々な要因で生ずることがあると説明してきました。

 今回の大変な状況はこの要因⑤と云うことになりますが、東日本大震災に端を発する事態は単に東日本だけに限らず、とてつもない影響を全国的に長期にわたって及ぼし、日本はこれが原因で危機的な状況に至り、国内産業が低迷し本格的に空洞化してしまう可能性があります。我々自身これまで以上に積極的に前向きに対応しないといけないと思います。

 一方、資源の乏しい日本が世界に伍して先導するには、日本の人の力、ものづくりの強さを生かすことが大事であると云われてきました。勤勉さ、和を尊び協力して物事を進める伝統的に日本人が持っている素晴らしい特質、背景があり、そこに全国民の高い教育レベルがあって発展し繁栄を維持できてきた、と云われてきました。ところがそれが日本の特質と云い続けることができないような事態になりつつあるように思われます。すなわち、日本は少子高齢化と云う難問の中にあって若者の学力の著しい低下、積極性の欠如、理系離れ、将来に対する夢を描きれていないなど基本的な様々な課題が山積しております。

 実際、ゆとり教育も大きな原因ですが、日本の学校教育レベルの質的、量的な低下は目を覆うほどであります。我々の関係する電気分野は、かっては理解力、実行力の高い高校生が好んで専攻し進学してきたのに対し、今は逆に敬遠されることが多いのであります。先日もある大学の電気系の学生に“かっては医学部より遥かに難関であった。誇りと自信を持て”と云いますと、びっくりしておりました。高度成長期から続いた日本産業の隆盛は工学、電気関係に優秀な若い人たちが集まったことも大きな要因でありました。  実は教育レベルが低下していると云うことを実証する資料が手元にあります。戦前の昭和16年、私の生まれた年ですが、この年に電気工学科を卒業された池田盈造さんと云う方の講義ノートが送られて来ました。殆どの講義の見事なノートであります。例えば電気磁気学のノートを見ますと、我々の時代に学んだものと遜色のないものでありまして、現在の学生さんにこの程度の教育がなされていないのではと思うほどてあります。ところが中国など外国では日本の教育レベルより遥かに高い、しかも膨大な内容を指導していることが、その教科書を見れば明瞭であります。日本はものづくりに秀で、本質的に産業の底力は強いと発言する人がありますが、本当に理解して云っているのかと云いたくなります。  ここで云っていることは決して大学の先生方の教育に対する取り組みが不十分と云うことではありません。入学、進学してくる学生さん自身が変わってきたと云うことと、実は大学が法人化されて以来、大学の先生が極めて多忙になり充分に教育、研究に没頭する時間を生み出すことが難しくなってきていると云うことが挙げられます。大学法人化で大きく変り、先生方の負担が非常に大きくなり、しかも特定の先生に業務が集中して掛かります。すなわち法人であるがための本来の研究、教育と離れた仕事が随分発生しております。

 もう一つ電気に関して云っておきたいことがあります。それは電気が余りに身近なものとなって、その重要さが不明瞭になっていたことです。今年1月、山陰のある地域では豪雪で数日にわたって停電が続き、電気なしの生活の困難さを多くの人が実感しました。そこに3月11日の大震災の後、稼動中の原発の停止、さらには定期点検中の原発の再稼動に大きなブレーキをかけると云う事態もありまして、産業活動、日常生活に深刻な影響を及ぼす電力不足に直面したわけであります。これによって電気が極めて重要であることが世の中全体にわたって強く認識されましたので、これを意識し、電気系を目指す若者が再び増えることを期待し、またそうならなければならないと思っています。我々澪電会の会員もあらためて世の中、社会に大きな寄与できる可能性があるように思います。  同窓会の存在意義は卒業生同士、指導教官を含めて、懐かしさを共有し懇親、親交を深め、温める、情報交換、連携を図る、母校の発展に寄与するなどいろいろございます。  澪電会においても従来の同窓会としての基本活動はもちろん、時局に応じて会員の皆様に、母校に、我国の振興に繋がる様々な活動をする必要があると感じております。例えば積極的に母校での講義に応援を行う。様々な分野の専門家、活躍している方が澪電会会員にはおられますので、この方々の力、知恵を利用しないことはないと思います。無料ボランティア的な立場でのご協力であって、決して現役の先生方への圧力組織であってはならないと思っております。我々自身積極的にご提案し、またご相談を受ける機会を作ることも大事と思っており、その一助としてこの澪電会がお役に立てばとも思っております。  実は、私、定年後故郷の島根県の産業振興のために少しお手伝いをしておりまして、地方は都会以上に極めて難しい大変な状況であることがよくわかっていますが、そんな中で産業振興のための支援、新しい研究開発の推進、大学との連携、産官学連携の促進、大学生、高校生、中学生、市民相手の講演会、社会での啓蒙活動など、さらには県、国の行政機関との折衝、外国の方への対応などとても広い範囲のいろいろなことに携わっておりますが、時には信じられないような要務が周ってくることがございます。そんな中にあって、同窓会の存在が非常に有難いと云うことをあらためて認識することになったと云うことが何度もございます。実際、澪電会のメンバーの方々などに本当に様々なことをお願い申し上げ、ご指導を賜ったと云うことがあります。あらためて人間関係の大事さ、友人、先輩、後輩、先生方との繋がりが如何に有難いものであるかと云うことを認識いたしましたが、澪電会はその中心であります。このことを若い方々、学生さん達に知っていただき、非常に有難い組織であります澪電会に積極的に関わっていただきたいと思っております。

 澪電会がさらに発展し会員の方々がそこから何らかのメリットを受けられる機会を少しでも大きくしていきたく、様々な試みを進めたいと思っておりますが、その中でホームページの更なる充実、効果的な活用がはかれないかと云う気持ちもしております。  同窓会は大中小様々なもの、性格のものがあります。大学で見ますと、大阪大学全体、工学部、電気系、これが澪電会でありますが、さらにクラス会、同期卒業の同じ学科の集まり、同一研究室卒業生の集まりなどいろいろですが、一般的には小さい組織の同窓会ほど互いの情報がよく分かるので、頻繁に連続的に活動を維持できる傾向にあります。澪電会はほぼ専門を近くし、共通の先生方にお世話になっており、学年を超えて面識があるなど適切な大きさのものとも云えますが、さらに小さ目の学年別、研究室別のものと連携、情報交換などを積極的に澪電会のホームページ上で行い、いわゆるネットを活用する活動の橋渡しをサポートする場としても充分な役割を発揮できるものと思っております。  現在、吹田キャンパスの電気系建物は耐震性も考慮して改修が進められつつあり、一年後には新しい姿になる筈であります。かって電気工学科からスタートした阪大電気系からは、次々と新しい学科、研究科、研究センターなどが生まれましたが、その過程で電気系学科、研究科は名称の変更を含めて大きくその姿、内容を変えつつあります。澪電会会員の皆様方には機会を作って変わりつつ、発展しつつある母校を見学していただきたく思っておりまして、ご遠慮なく見学したい旨を澪電会宛にご通知いただきたく存じております。その際には見学ができますよう機会、便宜を図っていくご協力を致したく思っております。

 このような様々な活動を積極的に強く推し進め澪電会の健全な発展を図るためにもそのための経費が必要でございます。是非会員の皆様のご支援を得て会費納入率が大きく上昇することを切に願っておるものであります。
 最後はお願いになってしまいましたが、澪電会の活動がさらに活発なものとなって、会員の皆様に少しでもお役に立って喜んでいただけるよう役員一同全力を挙げて取り組んでいく所存でございますので、どうかよろしくご支援、ご協力の程お願い申し上げます。


Last-modified: 2011-09-20 (火) 13:49:23 (2740d)